*写真屋の恋*
「(あ、)」
日曜日、午後6時頃。
だいたいいつもそれぐらい。
ネットで受け付けしている注文欄に『永瀬渡(ながせ わたる)』の文字。
私は、この人に恋、してる。
この人の、作品に。
写真屋の掟。
写真の色調整、明るさ調整、仕上がりの確認をするということは、人のプライバシーをばっちり見る事になる。
そういうのは口外はもちろん、あまり感情を入れて作業してはだめなのだ。
なんにも考えないで、それをただの絵として扱う。
…自分ルールだけど。
特に知り合いのデータなんかは無関心で作業、見た次の瞬間忘れるぐらいの勢いで仕事をする。
なのに。
そんなルールも吹っ飛ぶぐらい、私は魅入ってしまっていた。
人が写ったものが一枚もないけど、
花や、家具や、置物。
鳥や川や空や海。
すべてがこんなに綺麗にこの人の瞳にうつっている。
『永瀬渡』
「(永瀬さん、かぁ…)」