*写真屋の恋*



「で」





「…で?」(汗)




しばらく早足で歩いた後、頭一個分私より背の高い峯村君は立ち止まって振り返り、少し怒り気味に私に訪ねた。

もう12時近いというのに、まだまだ光々と照らすネオンが峯村君の顔に更に影を落とし、ちょっと怖い。



「ふぅ。『…で?』じゃないですよ柏井さん。」



握られた右腕がすっと外された。



「何があってああいうことになったんです?」


「んーー…と…」



「……。」



「あ、あははははは」

「…。」


説明されるまで頑として逃しませんよ、と峯村君の瞳が訴える。

いや、でもねぇ、ちょっとセンセイから逃げてたって言ったら、『じゃあなんで』ってなるじゃない?そしたら香水の話しになるじゃない?そしたら私の気持ちバレバレじゃない?

ハーズーカーシーイーー

「…柏井さん。」



「うー……」


ほんと怖い。普段可愛い子が凄むとほんと怖い。

「か し い さ 「こ!」



「こ?」




「ここではちょっと…」

あまりの恐怖で適当に口走ってしまった…

喋るのか?喋っちゃうのか?私。


「…ここでは、ねぇ…」

「…エ、エヘ。」



ここではというかなんというか。
こんな夜空の見える開放的なところで自分のずっと隠してきた心内を打ち明けるのは…ちょっと気恥ずかしい。


少しびっくりした顔して目をくりっとさせていた峯村君がしばらく考える素振りをしてつぶやき、よし、うん。と、細くて少し荒れている手で、また私の腕を掴む。



「んじゃ行きますか。」


…どこに?



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