*写真屋の恋*
「はぁ…」
あんな事で泣きそうになってる自分が情けない。
振り払うようにモップに力を入れる。
こんな事、それこそ何百回ってあったじゃない。
「しっかりしなさい私!」
そうだそうだ!こんなことで落ち込んでちゃいられないよ!
しっかりするのよ私!
来週のスタジオの手配とオフィスの整理と機具の点検と資料調達と、
ああそれからセンセイのお昼ご飯の調達と、
センセイ宛ての郵便のチェックと
センセイのパソコンのメールチェックと
センセイの礼状送付と
センセイの打ち合わせ日の確認と
センセイの撮影したデータチェックと…
『親がわりとして』
…っ。
「…あんな若いお父さんがいてたまるかぁーっ」
うぅ……っ…
モップの隣に水滴が落ちる。
所詮センセイから見て私はガキ以外の何者でもないって事。