*写真屋の恋*
ただ、あらためて思い知っただけ…。
「そこのアナタ。」
へ?
…びっくりした。
女の人の声がして、振り向けば扉に寄りかかった、見知った顔。
向けられた事の無い完璧な笑顔を咲かせて、赤いヒールをカツカツさせながら、…薫さんが近づいてくる。
「コンニチハ。」
「こ、こんにちは…。」
うはー、思わず営業スマイル忘れちゃったー…。
「渡は?」
「あ、センセイは今打ち合わせに…。」
ふーん?
そう言いながら赤いルージュでニヤリと艶っぽく笑って、値踏みするように見据えられる。
…な、なんの用だろう。
あー…、というか…このタイミングで会いたくなかったかなぁ。…ヘコむじゃん。更になんかヘコむじゃん。
しかも『渡』って呼んでるんだ。
…。
あー!もう!嫉妬の鬼になりそう!!