大好きな君へ
「じゃあ、今日は解散」
(終わった…終わってしまった…)
あー…御所くんさようなら。叉、明日も見守るからね!
覗き込んだレンズ越しに、汗の光る御所くんが見えて──涙が出そうになった。
“御所くん、大好き”
心の中でそうつぶやいて望遠鏡を外した。
「各自備品は、部室に返却して帰って下さい」
高瀬先輩の言葉に他の部員たちは、ざわざわと帰って行く。
(じやあ、そろそろ私も…)
「失礼しま…─」
「不真面目な部員は、居残りで後片付けをしてください」
「な?吉野」
見下すような視線を向けながら、そう言って眼鏡越しに私を意地悪な目で見つめた。
「えっ?私…?」
「当然だろ?ぼくの忠告を無視した報いだ」
(うーーーーーー)
「先輩、私のこと苛めて楽しんでるんですね」
「別に」
「……」
本当に興味が無いとばかりの声音───
「ほら、さっさと片付ける」
上から見下すような命令口調。
うわさじゃ超美人の彼女がいるとかいないとか…
品行方正。学力優秀。文武両道。四文字熟語のオンパレードの先輩。
なんで野鳥クラブなのかはわからない。
やや横暴な性格(←私調べ)だから敵も多いはず。
こんなになんだかんだ言っても、実は高瀬先輩のことは嫌いじゃない。
他の男子みたいに私のことぶーちゃんって呼ばないから…。
いつも吉野って名前で呼ぶから。
そういうところは、いいよね。高瀬先輩って。
でも!御所くんが一番!いい人だよね?
まだしゃべったことないけど。
一回も無いけど。
でもでも!
絶対いい人だよね!