大好きな君へ
俺は
かなーり焦っていた。
放課後のクラブで、練習なんかそっちのけで
頭に浮かぶのは吉野のことばかり。
教室でのクラスメートの声が耳に焼き付いて離れない…
“オレ、お近づきになりてぇ~”
(…)
思い出すたび、腹が立ってくる。
手のひらを返したようなあの態度…
おまえ等に吉野の良さの何が分かるんだっつーの。
(マジ、練習なんかできるか…。)
何とかしないと…ずっと隠していた宝物を横取りされるそんな気分だった。
飛び越えるバーの高さは2メートルを超えない。
“何だ?不調か?御所、クールダウンしとけ”
顧問の言われるままにグラウンドに腰を下ろす。
ぼんやりとグラウンドの端に目を向けると
吉野紗矩がいた。
(…あ)
俺は気づくと吉野紗矩に向かって走りだしていた。
全速力で───