大好きな君へ
─つけられてる…。
ジッと感じる視線。
少し後ろでする足音。
高校1年の夏休みに入る頃からだっただろうか?
そんなふうに思うようになったのは。
それに不思議なことに視線を感じるようになってから、毎朝恒例の痴漢にあうのがピタッとやんでいた。
触ってくるのは女ばっかりで、捕まえるのにも正直抵抗があって困っていたんだ。
ホッとしてる反面
─何かある。
ずっとそう思っていた。
その日も満員電車で痴漢にあわなくて、ほっとして駅のホームにおりた。
隣の車両から降りてきた同じ学校の女子が、駅員に向かって女の人を差し出していた。
女子は女の人の手首をしっかりと握って駅員を真っ直ぐ見つめていた。
めがねをかけたおさげ頭の女子。
どう見ても可愛いとか、美しいとかには縁遠いと思うその子を
俺は、きれいだと思った。
凛とした横顔がとてもきれいだった。