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ガラッ


皆の視線が私に向く。
私はそんなことはお構いなしに先生の隣に立つ。

「初めまして香狩朱嘉(カガリ シュカ)です。」

少しだけ教室内がざわついた。

「えー。香狩はついこの間引っ越して来たばっかりで
この学校に来るのも初めてだそうだ。
誰でも良いから案内してやれな。」

先生が紹介している間、
自分の席はどこだろうとばかり考えていた。
私が考え事をしていると先生は腕時計を見て言った。

「よーし。じゃぁそろそろHRを終え・・・」

「せ、先生。」

私はこのまま終わらせようとしている先生を慌てて呼び止めた。
 
「ん?どーした?」

 先生は不思議そうに私を見る。

いやいや、どーしたじゃなくて。

「…私の席はどこですか?」

私は全然気づいてないらしい先生に苛立ちを覚え、
眉を潜ませながら聞いた。
するとやっと気づいたのか先生は
罰の悪そうな顔を私に向けた。

「あ。忘れてた。」

おい。まじかい。

「別にいいですけど。」

私は仕方なくそう答えた。
すると何かがはじけたように大きくてたくさんの笑い声が聞こえた。

「「「あはははははははは!!」」」」

「石ちゃんひっどーい!!」

「一番忘れちゃいけねーこと、なんでわすれるかなぁ!」

「やっぱ石ちゃん!そーこなくっちゃね!」


生徒達は口々に先生を笑いものにした。
たぶん皆も気がついていたのだろう。
それをあえて口にしなかったのだ。

・・・だから笑いをこらえたような顔をしていた人がいたのか。

「う・うるせー!!俺だって忘れるときはあるわ!!」

先生は顔を真っ赤にして怒っている。
私はその光景をあっけにとりながら見ていた。

あーこの人いつもこんな感じなんだ…



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