だって君が好きだから。
「岸田くん、
ミシン上手だよね。」
「そ?
俺と付き合いたくなった?」
最近の岸田くんは
ずっとこんな感じで困る。
最初のころは笑顔で
交わしてきたけど
だんだんハッキリと言える
ようになってきた。
「そんなこと言ってないし。
ミシン上手って言っただけでしょ。」
「ちぇっー。
わかってるっつの〜」
「わかってるなら、いいけど。」
「でもさ!いつになったら
俺と付き合ってくれんの?」
「あたしがキョーちゃんと
付き合ってるの岸田くんも
知ってるでしょ?」
「知ってるよ」
「…だったら」
そんなこと言わないで
って言おうとしたのに
「でも、あんまり
好きしゃないだろ?」
「…え?」
「だってさ、修と
付き合ってた時と全然
違うじゃん、森野。」
「違うってどこが?」
「全体的に違う。
修と付き合ってた時はさ
顔に幸せって書いてあったし
いっつもヘラヘラ笑ってたし
ピンクのオーラ醸し出してた。」
「…そっ、そんなことないよ
今だっておんなじだよ。」
「全然違うって。
今もそんなんだったら
こんなこと言わない。」
「…岸田くん」
「なぁ、森野。
恭平からお前のこと奪ってもい?」
岸田くんは
そう言ってあたしを
じっと見つめる。