−アクターズライフ−地獄の時間

「アハハハハ！！君も一緒に地獄に堕ちるかい？
」


雛西麻衣子が木の長い棒を俺に向けて笑っていた。

演技だとはわかっている。
いつもは恐怖を感じてる演技をしながら内心は平常心でいる。

だが、今日はなんか知らないが、内心から恐怖を感じる。

目がマジだ。

いってる。

絶対この女演技じゃなく、素でやってる…。


そんな事を思うくらいやばく感じた。

絶対俺を殺そうとしてる。

そう思うと全身に力が入った。

やばいって、あの女いかれてるって…。



その時、パンッと手を叩く音が聞こえた。

「ひな子、動きがおかしい。」

演出の加藤さんがあの女に指摘した。

俺の体の力は一気に抜けた。

「お前、動きがおもしろい♪」

俺と雛西の演技を見ていた役者やスタッフは雛西のぎこちない動きに笑っていたが、俺は全く笑えなかった。


「じゃあ、いったん休憩しようか。」

加藤さんがそう言うとそれぞれ散らばった。




「橘君、今日のなんかすごかったね。」

俺が、水を飲んでいると同じ年で最近仲良くなった中村が話しかけてきた。

「え？…あ…ああ、ひなちゃんね。」

「いやいや、あれじゃなくて、橘君がさ。」

「俺が？」

「なんか、本気で怖がってるように見えた。」

「あ…いや…ま…まあな♪」

本気で怖かったんだよ。

お前もあの女と一緒に演技してみろよ。