愛、シテあげる。*完*
「真央さん?」





顎を掴まれ、クイッと上げられる。
こ、この仕草は、女の子がドキドキする仕草ベスト10に入ると断言できる。



え?んなことどうでもいい?



仕方ないんですよ、ドキドキしすぎて思考回路壊れてるから。





「……ぅう///」





蓮の顔が間近にあって。





真央ちゃん鼻血出すかもしれない。




変態じゃなくても出ちゃうこれは。


悪あがきに、目だけでも下にそらすと、蓮の髪の襟足が見えた。




白い首筋に黒髪がなんとも…………













「ん?」







目に入った"痕"に、体が固まる。







「蓮……それ、どうしたの」







「え?」








私の硬直した表情に、蓮は私の視線の先を辿り、指で痕をなぞった。





そう、それ。







何、それ。















「この…傷痕ですか」







白い首筋だからなのか……嫌に目立つ紅い痕。



耳の下辺りからうなじまで、5センチ位の紅い線と縫い目がくっきりと残っている。








「いつ怪我したの?」






「……」






痛くないの?

痕はもう消えないの?

どうして怪我したの?

誰かにつけられたの?







頭を埋め尽くすほどに疑問が浮かび、問いただそうと口がパクパクと開閉を繰り返す。


でも聞けない……否。聞いちゃいけない。



触れ合う体から、蓮の震えが伝わる。


強ばった蓮の顔は、今まで見たことの無い表情。


緊迫した、どよんとした黒い空気が蓮を包んでいるように感じた。








しばらくの沈黙の後、蓮が深いため息をついた。



水じゃない液体が、白い首筋を伝っていく。


「流石に……気づいちゃいましたね」




迂闊でした、と呟く蓮に、いつもの余裕は見当たらない。




口元は微笑んでいても、目が笑ってない…。




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