愛、シテあげる。*完*
遠くで、昌彦さんとママが笑ってる。

微かに聞こえる水音、笑い声、



そして、

蓮の吐息。





「せっかく、ここまで隠してこれたのに……」






私を抱きしめる腕が、一段と強い力で包んでくる。
心臓が跳ねた瞬間、コテン、と蓮の頭が肩に寄りかかった。
可愛い仕草に、震えてる体に、自分の中にある母性が溢れだして。

大丈夫だよ、と言うように、片腕は蓮の広い背中に、もう一方は蓮の頭に置いて。
ギュッと、ギュッと抱きしめた。







「蓮。無理して話さなくていいよ」



「ありがとうございます。でも、もう先伸ばしにはできません」





先伸ばし?





「つい先日の朝、僕と噴水に行きましたよね」


「うん」


「その時話せなかった……話したくなかった、秘密を言います」




「秘密……」



あの時、蓮が教えてくれなかった秘密。



「話したくないんですけど……いつかは、話さなければいけないことですから……」




そう言って、蓮は私の肩に頭を小さくすりよせた。
























「…………この傷痕がついたのは、13年前。僕が3歳の時です」




13年も前に……。



「交通事故です。僕の他に、前の座席に両親が乗っていました。


雨の日で、道路がとても滑りやすくなっていたそうです。
山の中の高速道路を走っていました。確か、運転していたのは僕の父親です。






僕達は長旅で疲れていて、あまり会話もせずに車に乗っていました。


そうです……今でも覚えています。
重い頭を起こした瞬間、目の前にトラックが見えて……








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