愛、シテあげる。*完*
●●真央side●●







雨。








学校から、さあ帰ろうというときに。





「傘忘れちゃった」






ついてないな、と呟く。







小降りならいいのだけれど





ザアザア、




というかバアバア






降っているわけで。







走って帰ろうにも帰れない雨足の強さ。








嫌だなあ。








蓮が日本で過ごす、





貴重な時間が雨なんて。








まるで私の悲しみが表れているようだ。




でもきっとこの量は







「蓮も、悲しいのかな……」







靴箱で一人ポツリと呟いた。








あなたが悲しんでいたら私は、





幸せになんてなれないから。




だから








悲しまないでよね。







そう考えていたら


ふと、蓮が心配になる。









……。









明日、蓮に会える最後の一日…。









もう一度会いたいな。






顔見たら泣いちゃうだろうけど








でも









「会いたいよ……」












明日、あなたは







遠い遠い、



海を隔てた場所に行ってしまう。








会いたい。









会いたいよ。









蓮に会いたい。









ザアアア、と降る雨は未だに止まなくて






ずっと、鉛色の空に

蓮の顔を思い浮かべて









あなたがいなくなるなんて








やっぱり、



悲しいよ……。










そっと、目に見えぬ太陽を見つめて






――明日は晴れますように――









そう願った。












――蓮が旅立つまで、


あと一日。




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