愛、シテあげる。*完*
―――…蓮!―――
――――え?
ドキリとした。
心臓が、止まるかと思いました。
だって今、一瞬
時が止まって
真央さんの声が
聞こえた気がしたから。
「……真央、さん?」
はっ、と我に返って、辺りを見渡す。
しかし愛しい人の姿は無い。
いない……。
幻聴でしょうか?
でも、嫌に胸が騒ぎ出す。
落ち着かない。
階段を下りようとした瞬間
ビキッ
「―――ッ…ぅ!!」
首筋に走る激痛。
思わずしゃがみこんでしまうが、
おかしい。
「蓮様!どうなされましたか!?」
「いえ、大丈夫です」
直ぐにおさまった痛み。
何だろう。
何だろう、この嫌な胸騒ぎは。
何だろう、今の激痛は。
ドキドキし始めた胸を、手で押さえる。
もしかして……
最悪な考えに、背中を汗が伝う。
いや、まさか。
そんなはずはない。
きっと幻聴で
痛みも胸騒ぎも気のせいで
真央さんとは何の関係も、無いはずだ。
そうだ。
無いはずなんだ。