愛、シテあげる。*完*
……ああ
ストン、と
何かが胸に落ちてくる。
良かった。
良かった……。
真央さん……。
紫さんも、安心からか口を押さえて瞳を潤めている。
本当に、良かった…。
「しかし」
医者の声に、ピクリと肩が跳ねた。
「意識はまだ、戻っていません」
「え?」
手術は成功、したのに。
驚きで目を丸くする僕と紫さん。
「今夜から何日間かが、峠でしょう」
「それはどういう、こと……ですか」
震える唇。
何ですかそれは。
どういうことですか。
峠なんて、やめてください。
「首の辺りから後頭部にかけて、酷い損傷を受けていました。ですから、脳へのダメージが大きくて、体が治っても脳の機能が働かない状態になる可能性があります」
つまりそれは
「植物人間になるかもしれないって、ことですか」
植物人間。
口に出しただけで泣きそうだった。
嫌です。
そんなの、嫌ですよ……!
「私達に出来ることは全て行いました。ここからは、あなた方に託します」
そう言うと礼をして、去っていった。