愛、シテあげる。*完*
「真央。真央っ!」



紫さんが、ベッドに駆け寄る。




僕も駆け寄った。








「……真央さん」










ポツリとその名を呼べば






起きるんじゃないか



目覚めてくれるんじゃないか










そう思うくらい、真央さんの存在を強く感じた。











でも固く閉ざされた瞼は開くことが無くて




ただ呼吸器がシュコーと音を立てるだけだ。












あれ、








おかしいですね。











おかしいです。












あなたはついこの前まで




僕と同じ部屋にいたのに。




僕と同じ空間で




同じ空気を吸って






同じように、泣きそうになりながら話をしていたじゃないか。












それなのに、どうして。












「真央さん……」












呼んでるのに。










あなたを呼んでいるのに。














どうして、














動かないんですか。

















またあの笑顔で








――冗談だってば。魔王は心配症だなあ――















そう言って。
















ねぇ、笑って?
















笑ってよ。













僕に、笑いかけてよ。


















変態でも魔王でも





嫌いでもバカでも







どんな言葉でもいいから














あなたの声を、聞かせて。








聞かせて、ください。














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