愛、シテあげる。*完*
肩に冷たい何かが落ちる。



私もいつの間にか涙をポロポロこぼしていた。





「僕は、真央さんを……傷つけてばかりで……」



ほんとだよ。


無視されて、かなり堪えたんだ。

アメリカに行くって聞いたときは、胸をえぐりとられたような感覚になった。


思い出すだけでも、辛い…。



「自分の気持ちも、見て見ぬ振りをして……。ただ、逃げてました」


「うん」



「あなたのこと……っ、凄く、凄く好きで。いとおしくて、大切だったから……壊してしまいそうで、怖かったんです」



でも、と蓮は続ける。






「それが、仇となりましたね」



ポツリ、ポツリ、と小さな、でもしっかりした声で、話してくれる蓮が、どうしようもなく愛しい。





「本当は、真央さんと離れたくなんか無かったのに、僕は突き放した……」



「うん」



「なぜなら、僕の側にいればあなたは、必ず苦しい思いをするから。辛いことも、悲しいことも、たくさんあるだろうから」


「うん」



「真央さんには、いつも幸せでいて欲しい」



「…………でも、蓮の側にしか、私の幸せはないよ」



しっかりした声でそう伝えれば、蓮は深く頷いて







「もう、逃げません」












涙に濡れた瞳と、視線がぶつかって





優しい、キスをした。

















蓮が、


大企業の次期社長であろうと



私と血の繋がった兄であろうと




関係ないよ。





私は、蓮の側にいたい。


一緒に、生きたいんだ。







ありったけの愛を込めた口付けは、甘い甘い、幸せの味がした。













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