愛、シテあげる。*完*
ジャーー
水で火傷した左手冷やす。
ヒンヤリして、痛みが段々おさまってきた。
でも、気に入らないんだ。
あ、冷やしてるのはいいよ?
気に入らないのは…
「この体勢は、何ですか蓮君」
蓮君の大きな手に左腕は掴まれ、
私の腰には腕が回されている。
「応急処置ですから」
シレッとしている彼。
……何だか本当に
「呆れた」
「光栄です」
「誉めてない!」
けなしてるんだ馬鹿野郎!
ていうかこの男は、どうしてこうも必要以上に触ってくるんだろうか!?
なんだか、
だんだん怖がるのも馬鹿らしくなってきた……。
「震えてませんね」
「そーいえばそーですね」
いつの間にか震えは止まっている。
「僕が怖くないんですか」
ひぃっ!
ゾッ
わざと耳元で話しやがる蓮君。
絶対確信犯だ!
「だって、蓮君は男というより、変態としか思えない!」
「ひどい言い様ですね。照れ隠しですか」
「本・心・です!」
ムキになって言い返す私を、何がおかしいのか、蓮君はクスッと笑う。
わわっ!
吐息が耳朶にかかって、肩がピクリと震えた。
一瞬、心臓がはねあがった。
「れ、蓮君。もう大丈夫だから、離して」
「駄目です。最低10分は冷やしましょう」
蓮君が耳元で喋る度に、背筋に甘い感覚が走る。
恐怖とかそういう感覚じゃない。
これは何?
何なの?
違う意味で怖くなる。