愛、シテあげる。*完*
「ってなわけで、ママおめかししてくるわッ」






「…はぁ」





私はママの背中を見送りながら、溜め息をついた。








私は生まれつきの男性恐怖症。


異常に男が怖いんだ。
赤ちゃんの頃から、男の人に抱かれると大泣きしてたらしい。ちょっと目が合っただけで寒気がするし、まして触ったこともない。近づいてきたら怖くて体が固まっちゃう…。


はっきりとした理由は分からないけど、ママは父親がいないことだって言ってる。

その父親は、私とママを残して家を出た。そして、5年前。私が小学5年生のときに結婚したとママから聞いた。
話を聞いたとき、怒りで顔が真っ赤になったことを覚えてる。






あんな奴



父親とも思いたくない!!






















……私ってば




嫌な事考えてた…。

ふと我にかえる。







また溜め息をついた。


2階から、ママの鼻歌が聞こえる。






ねぇママ。



ママは「真央ちゃんを傷つけたりしない」って言ったけど



一番傷ついたのは、ママじゃないの?





沸き上がった想いを必死にこらえた。




あの人に別れを告げられて、残ったのは寂しさ、悲しみ、憎悪、それから赤ん坊の私。



どんな思いで、今まで私を育ててきたの?

もし過去が繰り返されたら?


ママは大丈夫なんだろうか。






心配でたまらないよ……。
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