愛、シテあげる。*完*
「帰るの早かったですね」

「うん…(泣)」

紫の馬鹿馬鹿馬鹿!
「まぁ僕にとっては好都合ですけど」
「!?」


あぁ……蛇に睨まれた蛙ならぬ、魔王に舌なめずりされた庶民の気分。

こうなったら……

とりあえず、逃げるが勝ち!



ビュンッ

目にも止まらぬ速さで3階まで上がり、自分の部屋に入る。今なら50m走で6秒台はいける気がする。多分。


クローゼットを開けて、脱いだ制服をハンガーに掛ける。

そして適当に選んだ、ショーパンとTシャツを身に付けた。
あは。乙女の欠片もない格好。
ま、いいか。


エプロンを着けてから、部屋のドアを開ける。

開けた途端、蓮がいるんじゃないかと軽くビクビクしてたんだけど……
流石にいなかった。
蓮は神出鬼没だからなぁ…;怖いんだよねぇ。



階段を下りて、1階の洗濯機置き場に行く。

洗濯物をガボッと入れ、液体洗剤と柔軟剤を入れてスイッチオン!


回り始めたのを確認してから、パタパタと階段下の物置に向かった。

押し込まれている掃除機を出して、リビングまで運ぶ。
リビングは、蓮のいるキッチンまでの距離が近い。でも、仕方ない…。頑張って逃げよう。
よし!








カチャカチャとお皿のぶつかる音と、掃除機のウィーンという機械音がミックスして聞こえる。


私は、身を屈めたり腕を目一杯伸ばしたりして、懸命に掃除機をかけた。




10分位してから、掃除機の電源を切って、もとの物置に運ぶ。
この10分、蓮とは特に会話をしなかった。
なんか……珍しい。もっと何かされるかと、構えてたんだけど。



何も無いならいいか!
今日はきっといい日なんだ!

なんて思いながら、お風呂場に向かった。
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