愛、シテあげる。*完*
のぼせる寸前で浴槽から出て、シャワーで体や頭を洗った。




その間、蓮からされた色々なことを思い出しては


ドキドキして、手が震えた。




蓮の腕の中で感じた熱を、体が覚えてる。




おかしいよ、私。




男の人は、怖いだけだったのに……。








風呂から上がり、部屋着を身につけてから脱衣所を出た。





ホンワカした体が心地よい。


ほんのり薔薇の匂いもして、少しお姫様気分。






自分の部屋の取っ手に手をかけたとき、隣の部屋が目に入った。





……蓮の部屋。




あいつの部屋がどんななのか、少し気になった。


でも、そう思ったのも数秒。





だって、絶ぇっ対!いかがわしいことされるもん。




蓮の部屋から視線を外して、カチャリとドアを開けた。






柑橘系の色を基調とした、自分の部屋。


落ち着く匂い。



落ち着く色……








…………?












「あ、真央さん。お帰りなさい」







バタン










おかしい。ベッドの上に何か黒いものが見えた気がする。

しかも幻聴ときた。
おかしい。

恐る恐る取っ手に手をかける。



カチャ




「あ、真央さん。お帰りなさい」







バタン









いやいやいやいやおかしいおかしい。

アイツがここにいるわけないじゃん私の部屋じゃん私のベッドじゃん。

ていうか2回も『あ、真央さん。お帰りなさい』とか何。あ、って何だよ。わざとらしいんだよ。







バンッ








「あんぎゃっ!」




いきなり開いた扉にぶつかる。普通に痛い。



中から出てきたのはやはりアイツで。


何処か感情の無い瞳をして立っていた。
神秘的な雰囲気にしばしみとれた…………


のも束の間。





「何してるんですか」




「それはこっちのセリフだよ」






何呆れた顔してんの。
蓮って思考回路がなんていうか、ズレてんだよね。




顔は綺麗なんだけど。



はあぁ。



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