愛、シテあげる。*完*

















「真央さん」













グッ、


と腕を引かれて







あれ?今のやり取りさっきもしたような……。



なんて呑気に考えて



気がついたら、










蓮の閉じられた瞳が目の前にあった。











多分ほんの数秒。

いや、一瞬かもしれない。







だけど、



蓮の睫毛とか





顎を掴む蓮の指とか







ふわふわであったかい唇とか









全てが、夢のように感じて





一瞬、時が止まった。











ゆっくりと開かれた蓮の瞳。




離れていく温もり。







それらを感じて、やっと、キスされたという実感が湧いた。
























「……好き、ですよ」












え?





喉に、クッと息が詰まる。




「……っ」





心臓が、またバクバクしてる。







どうしよ……なんか




嬉し……



「その顔」







「は?」








「押し倒したくなります。ホントに」










――押し倒したくなります



――押し倒したくなります







…………。













「……
















蓮の変態!!!」











バコォッ







腹パンをお見舞いして、一気に階段を駆けおりた。








馬鹿。









馬鹿馬鹿馬鹿!!















息が、止まるかと思った。











あんな顔で







あんな声で














「…………馬鹿ぁぁ!!」
















このとき私は、気付かなかった。






蓮がどういう思いで、その言葉を発したのか。




どうして誤魔化すようなことを言ったのか。








まだ、何も知らなかったんだ。









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