恋におちた <短編集>
もう当たり前になった琉太のキスは、優しい………。
何も考えたくない。
「琉太………。」
でも………
いくら体の関係と言っても、あたしの初めては奪ってくれない。
気持ちの問題………?
「愛、俺帰るわ。」
そう言って上着を着る彼を、あたしはずっと見たまま………
「琉太、またね。」
「またね」は、また会えるっていうおまじない。
毎回会う度に、もう琉太に会えないんじゃないかって不安があたしを襲う……。
「おう、またな。」
でも琉太の笑顔を見れば、不安なんか吹っ飛ぶ。
これは、惚れた弱み……
「す……き………。」
琉太がいなくなった部屋であたしは1人呟く。
「琉太……好き……。」
いくら呟いても届かない想い。
涙と一緒に好きって言葉も出てくる。
この想いは琉太には言えない。
「好き」は終わりの合図。
始まりにはならない………。
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