きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう

 仕事を手伝ってくれる人が居なくなった。
 嫌なことは押し付けられた。

 2年ほどの間に急激に鬱病が悪化した。
 しかし、それを相談できる相手はどこにも居なかった。



 もともと化粧をしていなかったが、ある日お局様に店で買った化粧品の一式を渡される。

「接客業なんだから化粧ぐらいしなさい」

 絵に描いたようなぶっちょう面だった。
 小さく『はい…』と返事をして化粧をした。
 視線が痛い。

 どんな気持ちで自分を見ているのだろうか。
 化粧を終えて、商品の代金を渡しに行く。

「あの、ありがとうございました。さっきの分の…」
「いらない」

 商品の金額分、キッチリと揃えて渡そうとした。
 会話すら拒まれた様だ。

「いや、でも貰うわけには…」
「いらない」

 視線を合わせようともせず、顔を向ける素振りもない。
 仕方なく手を引っ込め、深々と一礼をした。

「ありがとうございました」

 その後も淡々と仕事をこなし、帰宅。
 次の日が最後の出勤日となった。
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