きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう
高校生

「ちょっと聞いた?あの二人、別れたんだって」

 いつどこから情報を仕入れるのか知らないが、女子は噂話の塊だと思う。
 くだらないことでも、話をしている最中はその全てに疑問を抱き、また共感するのだろう。

 隣のクラスの男子は、コーラしか飲まないらしい、とか。
 数学の教師は昔かなりスマートだった、とか。

 しかし、その会話の中の一人が、コーラ好きの彼のことを好きだったら、ただの噂話ではなく友人の未来がかかった話題になるのだ。
 噂話といえども、侮れなかったりする。

 教室で一人、文庫本を読みふけっている加藤奏も、実はその会話が気になったりならなかったり。
 結局は無駄話をするのが、女の生きがいの一つとなっているのだろう。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


 奏の部活は購買部。
 と言っても売っているのは授業で使う文房具のみ。
 そこに毎日顔を出すのは、見知った仲間内だけ。

 学校祭の時期は馬鹿みたいに繁盛するが。

「加藤ー。帰りにカラオケ行くって。お前は?」
 昼休みの部室でレトロなレジスターの前に座っている奏は、読んでいた文庫本からちらりと目を離す。

「放課後、多目的室に集合だってよ」

 右手がひらひらと力なく泳ぐ。
 文庫本の残りのページが少ない。
 クライマックスに差し掛かっているのか。
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