きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう

 固定しているかのようにびっしりと血液が癒着していた。
 唯一残っている卵巣が危険な状況だと嫌でも解った。
 子宮と大腸が繋がっているようだった…。
 その後も治療は続けたが、進行が遅いため、半年に一度の診察となっていた。
 三年ほど通ったが、残念なことに医師不足で産婦人科が無くなってしまう。

 その後数年どこの病院にも通わずに生活していたのだが、やはり進行していたようだ。
 激しい痛みに耐えられなくなり、再度別の病院へ受診すると、取ったはずの左の卵巣が復活していた。

 その中に大量の血液が詰まっている。
 昔と同じ診断を受けた。

 それだけではない。
 子宮腺筋症と診断された。
 つまりは子宮という内臓の皮膚の中に血液が溜まっていたのだ。

 通常の子宮のサイズは直径四センチほどが、八センチほどになっていた。
 子宮が腫れたと言うよりは、皮の中で血液が形成されて伸びた用な状態らしい。

「数年前なら、この状態だと全摘出手術しか無かったけれど、子供を作りたいと思っているなら、皮膚の中の血液だけを取り除いて継続する事も可能だよ」
 医療の進歩に救われたと思った。

 数週間後に手術を予定して、また入院生活が始まった。
 四人部屋の病室。

 手術をした人や控えている人の割合が高かったが、向かいに居た主婦の方は全摘出したそうだ。
「子供も産んだし、この年だとあとは更年期を待つだけだから」
 そう言って笑っていた。
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