きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう

 『あなた、お子さんは?』
 なんて言われて、子供が欲しいから子宮を残して貰うと説明した。
 実際は宝の持ち腐れだと思っている。

 子供をお腹の中で育てるためには、子宮が不可欠だ。
 卵を作る卵巣も必要。
 妊娠するためには卵管が卵を運ぶ必要があるのだが…。

 彼女の体にその機能は無い。
 何時だっただろうか、あの大腸のような卵管を見た数ヶ月後。


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「卵管って言うのはね、大腸と同じで、卵が自分から子宮に移動するんじゃなく、卵管がうねうねと動いて、卵を運ぶの。でもね、あなたの卵管は、腫れすぎて身動きが取れない。卵を運ぶのは不可能なの。普通妊娠は出来ないわ。」

 ショックだった。
 腫れすぎて動かないどころか、通路も塞がっている。
 今の医療で卵管の腫れを引かせることは不可能だと言われた。

 彼女に残された妊娠方法は一つだけ。
 体外受精。
 卵巣の中の卵を取り出し、その卵に精子をふりかけて子宮に戻す。
 一度の手術で最低でもって二十万以上の費用がかかる。

 そんなお金は無い。
 しかもそれで子供が出来るとは限らない。
 きちんと子宮に着いてくれるか解らない。
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