きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう

 三年間『カメ』と呼ばれ続けたが、自他共に認めるれっきとしたあだ名だった。
 後輩すら『カメ先輩』と呼んできた程だ。

 残念ながらいじめっ子の思惑を打ち砕いた。
 その後も何かと試みてきたが、あまりに可愛らしい嫌がらせで、聞き流してきた。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡


 高校を卒業して初めて就いた正職員が保険の外交員だった。
 制服なんてものはもちろん無い。
 かといってラフな格好で行くわけには行かない。

 自分なりに考えて、落ち着いた服装で出勤していたのだが、上司の視線は冷たかった。
 男性の目から見ると、有り得ない服装だったのだろうか。

「それがお前のセンスか」
 病院通いで自分のお金が無い状況。
 リサイクルショップでかき集めた服では確かに限界があったが、すべてを否定された気がした。

 半年に渡り様々な罵声を浴びたがよく覚えていない。
 次第に職場に就くと体調が悪くなるようになってきた。

 そして、過呼吸を起こす回数も増えて、出勤して、
 『営業に行く』
 と伝えて自宅に帰り、夕方まで寝て、職場に戻る。

 なにもする気が起きなかった。
 何もしなかった。
 何も出来なかった。
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