きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう

 初めて暴力を振るわれた後、涙を流して謝ってきた。
 それを許してしまったのが始まりだと思う。

 ご飯を作っても、虫の居所が悪いと、平気で料理をぶちまけた。
 お弁当を作れなかったからと、おにぎりを渡すとこんな物いらねえと、壁に投げつけられた。

 顔面を平手打ちされて、
 頭部を殴られ床に叩きつけられ、
 馬乗りになられ、
 首を絞められ、
 髪の毛を掴み振り回された。

 よく四年間も夫婦生活をしていたと思う。
 鬱病がひどく、朝起きられない事もあったが、怠惰だと怒鳴られた。

 何もする気が起きなくて、家事を放り出したくなる事も多々あったが、何をされるか解らなかったため必死で動いた。

 共働きだったが、家の中のことはすべてやらされた。
 ゴミ出しすら手伝ってくれなかった。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡


 秋の寒い夕方、車から降りるときに壁に助手席のドアをぶつけてしまった。
 必死で謝ったが、置いて行かれて、寒空の中一人延々と歩いた。

 なかなか離婚をしてくれなかった。

 やっと離婚が決まった頃には、左腕にびっしりと消えないナイフの跡が付いていた。
 手首を切るのが怖いなんて思わなくなった。

 無我夢中で切りつけた。
 ポタポタと流れる血液を何度も見た。
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