きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう
生涯忘れない人
 『あたしも小説書いてるんだ♪あと、詩も書いてるよ♪』

 カタカタとキーボードが鳴る。
 ネット環境があるおかげでワープロ検定も合格した。
 インターネット様々だった。

 『ホームページに載せてるんだ。『小部屋』って名前だよ♪』
 有名会社に勤めている父親のおかげで、小学生の頃から自宅にパソコンがあった。

 父親が自宅に持ち帰った仕事を処理するためのものだったのだろう。
 が、いつの間にか彼女専用パソコンとなりかけている。

 インターネットで出会った、星の光と名乗る男は奏と同い年。
 小説家を目指しているという。
 彼もまた自作のホームページでそれを公開していた。

 自分の書く文章がどれだけ幼稚か思い知らされた。
 吸い込まれるように読んだその文章力は、尊敬に値する物だった。

 会話も弾み、電話番号を交換する時間はすぐに訪れた。
 星の光の艶っぽい声色に安心感を覚え始めた頃。
 友情を通り越して、恋愛に発展していたのは必然だったと思う。

「可愛いなぁ」
 そんな言葉を貰ったことは、生まれてこの方あっただろうか。

 素直に照れる彼女の声を聴き、淡いため息をつく星の光。
 完全な両想いだったと思う。

 二人だけの個室チャットで、甘い会話を何度もした。
 本当に好きだったが、双方若かった。

 お互いが好き放題に愛情を要求した。
 好き勝手なことを言い、喧嘩も数回した。
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