ハナ*キス
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桜並木には、今年も花の香りが漂っていた。
舞い散る花弁は、白じゃなくて、赤でもない。
かといって、ピンクから仲間はずれにされそうなくらい、地味に清楚な花たちだ。
立ち並ぶ桜の、とある一本の木の下に。
他とはシャットアウトされた、二人だけの空間があった。
その男女は今年、大学の2年目を迎える年頃だ。
明るい茶髪を掻いて、青年がうっすら口を開いた。
「2年ぶりやなあ! 元気か?」
パッとした笑顔で告げた挨拶。
久しぶりに会ったにもかかわらず、彼女はブスッと唇を突き出して目を伏せる。