お子ちゃま☆彼氏
今の顔は誰にも見られたくない。会社にも戻りたくない。
私はオフィス街の一角にある、小さな広場のベンチに座った。ギュッとつかまれたように締め付ける胸を庇うように、腕を組んで背中を丸めて。
息が苦しい。
私は先ほどの社長室での会話が頭から離れない。
考えたくないのに、頭をクルクルと駆け回る。
"待たせて済まなかったね。息子の婚約が近くいもんでね、急に会いになんて来たもんだから…"
そう笑顔で話す社長さんは、時代遅れの堅物オヤジなんかじゃなくて、ダンディーなおじ様だった。
海里にそっくりの笑顔で笑っていた。
息子なんだね…
婚約者がいたんだね…
考えたくない。
考えなくないよ。
海里…
私はどうしたらいいのかな?