お子ちゃま☆彼氏
「今日は楽しかったか?」
兄さんはハンドルを握ったまま私の方は見ずに聞いて来た。
最近出来たらしい、地元人の話題スポットの水族館へ、ちょっと遠出のドライブ。
兄さんは家族と来たから2回目だと言ってたけどね。
私は久々の兄とのデートで楽しかった。でも少しだけ"海里とも来たいな"なんて思っちゃう自分が居て、自分が自分で情けなかった。
アパートに帰ったら、海里の幸せを願うって決めたんじゃん。まだダメダメだな、私。自分の感情をコントロールするのは難しいね。
「楽しかったよ。兄さんありがとう」
その言葉を言ったのを最後にその後の記憶がない。兄さんの運転はホント心地よくて私はいつの間にか夢の中へ落ちていったようだ。
「……っとうに、…のか!!」
普段、滅多に声を荒げる事なんかない兄さんの怒った怒鳴り声に、起きかけてウトウトしていた私は、次の声でハッキリ目が覚めた。
「お前が夢を泣かせたのか!!」
誰?…泣かせた?
「え? に、兄さん?」
いつの間にか車は家の前に止まっていて、私はシートまで倒して寝ていたらしい。体を起こし、窓ガラス越しに外を見て絶句した。
海里が兄さんに土下座をしていたんだ。
「海里!!」
私は大声で叫ぶと外へ飛び出した。