約束



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「健介・・。」

「なんだよ。」

「健介、約束して欲しいことがあるんだけどさ。」


優は珍しく俺に弱気な目を見せる。

それが嫌に寂しそうで俺は少し気味が悪かった。


「いやー。俺、さ。病気なんだわ。」

「病気?」

「あぁ・・。」


優は寂しそうに海の方を見ていた。

果てない海の端を見つけようとしているかのように。



「大した病気じゃねぇんだろ?馬鹿は風邪引かないって言うしよ。」


俺はそんな優を見て嫌な気がした。

それを笑い飛ばしたくてそんな冗談をつく。

いつもなら「誰が馬鹿だよ!」と笑う優。

それなのに、今日の優は笑わない。

寂しそうに小さく笑っただけだった。



「ちょっと・・・お前まさか、重い病気じゃねぇよな?」

「健介には言おうと思う。」

「ちょ、ちょっと待てよ。」

「俺さ・・俺。」





「俺、肝臓ガンらしい。しかも末期。」




時間が止まった。

小学校から一緒にいた親友の突然のガン宣告。

平気でいるほうがおかしいだろう。


「冗談よせよ・・。」



優は笑わなかった。




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