約束
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「健介・・。」
「なんだよ。」
「健介、約束して欲しいことがあるんだけどさ。」
優は珍しく俺に弱気な目を見せる。
それが嫌に寂しそうで俺は少し気味が悪かった。
「いやー。俺、さ。病気なんだわ。」
「病気?」
「あぁ・・。」
優は寂しそうに海の方を見ていた。
果てない海の端を見つけようとしているかのように。
「大した病気じゃねぇんだろ?馬鹿は風邪引かないって言うしよ。」
俺はそんな優を見て嫌な気がした。
それを笑い飛ばしたくてそんな冗談をつく。
いつもなら「誰が馬鹿だよ!」と笑う優。
それなのに、今日の優は笑わない。
寂しそうに小さく笑っただけだった。
「ちょっと・・・お前まさか、重い病気じゃねぇよな?」
「健介には言おうと思う。」
「ちょ、ちょっと待てよ。」
「俺さ・・俺。」
「俺、肝臓ガンらしい。しかも末期。」
時間が止まった。
小学校から一緒にいた親友の突然のガン宣告。
平気でいるほうがおかしいだろう。
「冗談よせよ・・。」
優は笑わなかった。