約束
「西条君?」
目の前にいた先生は不思議そうに私を眺める。
「どうしたんだい?」
「いいえ、なんでも・・大丈夫です。」
アタシはそっと笑って先生を見た。
先生は少しニコリと笑ってアタシの上から手を退けた。
「さて、僕はこれから論文にかかろうとしよう。」
と、いつの間にか空になっていたコーヒーカップを下げてメガネを押し上げた先生。
「君も、書くかい?」
なんて意地悪な笑顔を見せる。
「そうですね・・今日はやめておきます。」
と言うと先生はそっと微笑む。
「そうだね、今日の君には休養が必要だ。ゆっくり休むんだよ。」
軽く手を振った先生。
アタシはお辞儀をして部屋をあとにした。
感じるのは服に染み付いた先生のビターな匂い。
先生のコーヒーの匂いが歩くたびに香る。
1人廊下をコーヒーの匂いに包まれながら歩いてアタシは学校をあとにした。