約束
「優・・・優。」
葬儀の終わった後、アタシは1人、優の棺の前で座っていた。
「逝かないって・・言ったのに。」
写真に写る優は笑顔を絶やさない。
栗色に染まった髪、お揃いのペンダント。
棺に入れて上げよう。
「優・・?」
そっと、棺を開ければ優が寝かされている。
よく人は亡くなった人と見て「眠っているようだ」という。
優もそう、息をしているようだった。
耳を澄ませば寝息が聞こえる気がした。
「優・・・。」
そっと、頬に触れて髪をすくい上げる。
手に手を重ね握る。
だけど、そのどれもが冷たかった。
あの温かさはもうなかった。
優は末期のガンだった。
それも肝臓ガン。
見つけたときには既に遅く、あちらこちらに転移してもう手の施しようがなかった。
それでも優は笑っていた。
「俺は大丈夫。100歳になるまでお前とは離れない。」
そう言って。
「嘘つき。」
優の頬に涙が落ちた。
綺麗に施された化粧が少し、落ちてしまった。