約束


「優・・?」


その声は優に似ていた。

バッと振り向いたけれどそこには誰もない。

空耳だった。


聞こえなかったほうがよかった。


胸が痛い。



「優・・馬鹿。」



零れる涙はとどまることを知らない。


時間と涙だけが流れていく。




『奈々』


聞こえた。

ゆっくりと振り向いても誰もいない。



「馬鹿だよ。からかわないで。」



なんて言ったって誰も答えてくれない。



「馬鹿ー!誰よ!誰がアタシをからかうの!?もうやめて!!」




アタシはとうとううつ伏せになって泣き出した。






『おじょーさん!!』



遠くから声が聞こえた。




< 33 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop