約束
「奈々。」
健介が目を腫らして立っていた。
「これから用事があるか?」
「用事・・ないよ。」
気がつけば優は白い箱に入っていた。
あんなにも華やかだった祭壇は見違えるように静かになっていた。
ぽつんと残された白い箱が浮かび上がっていた。
「少し、出かけてくるか。」
「アタシはいいよ・・・優と一緒にいたい。」
「そんなこと言うなよ・・。」
健介は寂しそうな顔をする。
「健介、優に逢いたいよ。」
「あぁ・・。」
「優に触りたい、体はもう無いのに・・・。」
「そうだな・・。」
白い箱にそっと手を置いて涙を落としたアタシ。
涙はもう枯れたと想っていた。
乾ききったこの身体のどこからこんなにも涙が出るのかわからなかった。
「寂しいよ・・優。逢いたい。」
優は返事をしてくれない。
寂しい白だけ。
「優。側にいてくれるって、言ったじゃない。」
「奈々・・。」
「優の嘘つき。逢いたいよ。ねぇ、優・・。」
健介はそんなアタシを見てずいっと近くにやってくる。
「奈々!行くぞ!」
健介は何かを決めたようにアタシの左手を掴んで歩き出した。