約束



「はぁっ・・・」


電話を一方的に切って俺は壁にもたれた。
ズルズルと力をなくした体は滑り落ちる。
ストンと腰を床におろして、電話を握り締める。


これでよかったんだ。
これで奈々は幸せになれる道を進んだんだ。


「情けねぇ・・・」


でも、本当は。

本当は俺が幸せにしたかった。
この手で・・・


幸せにしてやる自信があった。
だから蘇った。
根拠はなかったけど、幸せにしてやる自信が溢れていた。

なのに、今の俺は幸せにしてやるどころか奈々を困らせて。


「いっそ、消えたままでよかったかもな・・・」


何の為に蘇ったのか。
しかも期限付きで。
神様に喧嘩までふっかけてさ。


生きていた頃の俺は死について何も考えていなかった。
ただ漠然と、死んだら奈々が悲しむとだけ。


写真の中の存在していた「俺」は何も考えない馬鹿みたいな笑顔で今の俺を見ている。


「ばーか」




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