約束


先生になら任せられる。
先生なら奈々を幸せにしてくれる。
そんじゃそこらの、俺の知らない男より、先生はよっぽど信じられる。

だから…

だから、奈々が先生と幸せになれるように。
先生と一緒になって笑顔でいられる未来を開けるように。
俺がいなくてもいいように。

俺がいなきゃいけない、なんて自意識過剰かもしれないけど。
俺が消えることは確かだし、俺が死んでから暗い顔をしてた奈々を見た。
もう二度とそんな顔はさせない。
そりゃぁ、まぁ、多少は泣いて欲しいけどさ。
すぐに泣きやんで笑って欲しいんだよ。

俺をずっとずっと覚えていてほしい。
けど、俺を足枷にはしてほしくない。
俺という重荷を背負わせたくないから。


俺が蘇ったのは、奈々を悲しませたくないから。
奈々に幸せな未来を用意するために。



「さーて、今日の飯はなににしようか…。」


俺は冷蔵庫のドアを開けた。




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