約束

[奈々side]



「あの…これって……」
「面白そうだ。」

先生は笑顔でアタシに話す。
それはそれは素敵な笑顔で。


「嫌だったかい？」


なんて先生はおずおず聞いてくる。
さっきまで少年のように輝いていた笑顔が不安気になるその顔はとてもかわいい。


「いえ！違うんです。先生ってこういうの好きなんだなぁって……」
「下手なラブシーンを見るよりよっぽど好きだよ。」
「意外です。」


先生は「そうかい？」と首をかしげて頭を掻いた。


先生のおススメはバリバリのＳＦ映画。
あまり大人は評価せず、むしろ子供に人気のあるような映画だった。
てっきり、しっとりとした人間ドラマを見ることになると思っていただけに拍子抜けした。


「さて、チケットも買ったことだし。ポップコーンは欲しくないかい？」
「う～ん。そうですね、買いましょうか！」


いざ、ポップコーンを買おうとすると、先生はにこっと笑ってアタシを制す。
そして、二人分のお金を払ってくれた。

「悪いですよ！」
「いいんだ。男はこれくらいできないとね。」
「いや、でも…」
「女の子一人分のポップコーンも買えないくらい、男じゃない。」


なんて先生は笑う。
冗談も紳士で、先生は本当に大人の男の人だと実感する。
というか、大人の男の人でもここまで紳士ではないかもしれないけれど。
先生は特別優しいのだと思う。
彼女がいないのが不思議なくらいだ。