天使の足跡〜恋幟
第2章:再会






放課後の昇降口。

僕は、ポケットの中で鳴り続ける携帯電話を見た。

校門を出たところで取り出し、ディスプレイを見て驚く。


「太田……!」


なんて間抜けな声だろう。

鏡を見たら、きっと間抜けな顔でもしてるんだろうと思う。


僕は太田のことを、ずいぶん気に入っていた。

太田は特別な友達だ。

クラスの友達とか部活の友達とか、簡単には分類できないくらい特別な。

だから彼からの電話は、たまらなく嬉しかった。


「久しぶり!」

『久しぶり、槍沢くん』


相変わらずさらっとした口調だ。


『元気だった?』


とっても! ……と言えたら良かったけど、真っ先に頭に浮かぶのは勉強や進路のことで、


「まあまあだな」


と言ってしまう。

それに、最近歌っていなかったから。


『そっか。あのね、忙しいのは分かってるけど、久しぶりに会えないかなと思って』

「もちろん!」

『本当? 良かった! じゃあ今夜7時頃、川原に来られる? 槍沢くんに会わせたい人がいるんだ』

「僕に会わせたい人?」

『後は来てから話すね』


としか、教えてくれない。


そういえば……太田のちょっとした荷物は、まだ僕の部屋に残っている。


「あ、そうだ」


と、話を切り出す。


「太田の荷物、まだ残ってるよ」

『あ……、そうだったね』

「返して欲しければ返すけど、……またおいでよ。太田がいないと、結構退屈なんだ」


それは事実だった。

彼が出て行った後、僕のやる気や根気はすっかり失せた。
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