天使の足跡〜恋幟
半ば不安を感じさせる返事は僕のものだ。
剣崎さんが声を上げて、太陽のような笑顔で僕の肩を叩く。
「どないしたん? 何か心配ごとでもあるんか? シャキッとせえ!」
「はあ……」
「『はあ』やない! ハイ言うたらええねん! そんな悩んでると、歌えるモンも歌われんくなるぞ!」
口調は厳しく聞こえるけど、表情は優しいお兄さん。
人の心が読めるんじゃないかって思うくらい、実は僕が悩んでいたことを分かっているみたいだった。
太田によると、出会った時から『天使』の話もしたそうだ。
僕は鈍感で、太田が秘密を打ち明けてくれるまで絶対気付きもしなかったのに、剣崎さんは鈍感に見えて、結構核心に迫った発言をする。
なんだか面白い人達だな、と僕は思った。