天使の足跡〜恋幟
「うん。太田くんも、ああいうことするんだなあって、ビックリしちゃった」
「まさか……みんな知ってるのかな」
「大丈夫、あの辺りって路上ミュージシャンで溢れてるもん。まさか太田くんが歌ってるなんて、学校の子達は気付かないよ」
「良かった」
「でも、私はすごく素敵だなって思った。正直に言うとね、私もタクの歌、嫌いじゃなかったし」
加奈は照れくさそうに、人差し指で頬を掻いた。
「あ、そうだ! タクに『お誕生日おめでとう』って言っておいて。まだ早いけど」
「誕生日なの?」
「そう。12月24日、クリスマスイブ。メールとかしても、全然返してくれないの」
「なら、会いに来ればいいのに」
「タクの機嫌、悪くさせたくないから」
その一言で思い出した。
親戚内の評判は拓也より加奈の方が上手(うわて)であるから、敬遠しているらしかった。
そんな子供じみた不満まで汲み取って応じる加奈は、やはり彼の姉のようだ、と思う。
「伝えておくよ」