天使の足跡〜恋幟


「順二……お前、全然分かってないな」


途端、ぎろり、と。

恋助は眼光鋭く、順二を睨みつける。


「何でデビューの話が来た時、さっさと返事せんかった? 遠慮したん? 俺らが妬むとでも思た? 周りに反対されてるからって、そんで全部捨てたんか?」

「……かもな」

「この……ッ、どアホ!!」


低い声で吐き出す。

順二は驚き、伏せていた目を恋助に向ける。


「お前の力やろ! お前が歌ったから伝わったんや! 俺らができんかったことをお前がしたんやぞ! もっと自信持て! 何で俺らが手放したと思てんねん!? お前はこんな所で腐る奴やないからや!! 何でそれが分かれへんねん!!」


胸が痛くなる。

順二は心臓の痛みに堪えながら、自分の不甲斐無さを恥じていた。

まさか恋助がこんな思いで自分を見てくれていたなんて。

どうしてその心遣いに気づかなかったのか。

それが悲しくて、心遣いが嬉しくて、泣きたくなってくる。

泣いてはいけないと思うほど、涙を堪えれば堪えるほどに、目が熱くなった。


「ねえ、順二」


と織理江は言った。


「あたしも、今は怒ってないよ。確かにあの時は、すごく腹立ったけど。順二があたしたちの歌を取ったことより、それを無駄にしたことが一番嫌だったの……」


「ごめん……」


また俯く。
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