天使の足跡〜恋幟
恋助は気持ちを切り替えるために溜め息をつき、それから困ったように笑って、手を横に振った。
「……もう、ええねん。ねちっこいの嫌やし。許したってもええで。けど、お前はもう俺らのグループちゃうからな」
照れくさそうに笑った。
「これからは、ライバルや」
* * * * * * * *
「ライバル、ですか?」
聞き返したのは僕だ。
夕方、いつもの川原に集い、いつもの斜面に腰かけた四人。
「せや。今に越したるで!」
「そう言うなら、もっと真面目に練習しなよ」
織理江さんがからかって言う。
「いつも真面目やろ!?」
「どこが!?」
痴話ゲンカならぬ痴話漫才が始まらないうちに、僕は二人の間に割り込んだ。
「でも、話し合えて良かったですね! これで、クリスマスも楽しく過ごせますよね」
「あ、そっかー! いよいよ明後日だもんねー」
「槍沢くんも、明日には17歳だし」
出し抜けに太田が言う。
僕の誕生日を知っていることに驚いたけれど、剣崎さんと織理江さんもビックリしていた。
「へ~、クリスマスイブなんだ! なら、拓也くんの誕生パーティーしなきゃね!」
「よっしゃ、俺らも祝ったろ!」
「じゃあ、明日の夜8時に恋助の部屋に集合ってことで!」
「織理江……お前、何を自分家みたいに──」
「いいでしょ別に。で、いいかな、拓也くん?」
「ありがとうございますっ!!」
「よーし、練習始めるぞ!」