天使の足跡〜恋幟
そう言って二人は斜面を下り、川の方へと走っていった。
僕ら二人は遠くに見える剣崎さんたちを見て、ギターを抱え直した。
「何か剣崎さんたち、すっきりした感じするよね」
「うん。和解したからかな?」
「だな。やっぱり、仲間は仲間のままがいいよ」
僕らは笑って、無邪気に歌とギターで飛び跳ねている二人を見つめた。
やっぱり仲間は仲間だ。
強い絆で繋がってるって、こんな感じなのかもしれない。
「……ところで、僕の誕生日、誰から聞いたの?」
そう尋ねたら、太田は思い出したように僕の方を振り向いて笑った。
「『お誕生日おめでとう』って、咲城さんが」
「あ~」
と、落胆する。
「なに? 嫌だったの?」
太田が丸くした目を瞬いた。
僕は苦笑して首を横に振った。
嫌だった訳じゃない。
加奈の気持ちは素直に嬉しいのだが、『また加奈か』という感じがしてしまう。
昔から親戚たちによって僕と加奈のことを比較されてきたから、加奈の名前を聞くと、無意識にそういう気持ちになってしまうのだ。
それにしても加奈のやつ、太田を遣うとは。
そんなこと、いつもならメールか電話で言うくせに、共通の友達がいるからって……。
まあ、良いか。
「ありがとうって、伝えといて。会った時でいいから」