天使の足跡〜恋幟
何が気まずいという訳でもないのに、まともに顔を見ることさえできなくなった。
もっと言うなら、隣に僕が座ってはいけないような気すら起こったのだ。
これが、さっきまで加奈の髪や肌や瞳を覆っていた輝きが、誰も寄せつけない壁に姿を変えた瞬間だった。
そして、なぜだか僕は、さっきより更に加奈を避けてしまいたくなってしまった。
今まで子供同士のような感覚だった加奈のことが、大人の『女性』に見えてしまったから。
「良かったね、お幸せに」
加奈はまた、にっこり微笑んだ。
これからも加奈だけが大人になって、僕だけがまだ子供のまま、時は流れていくような気がした。
僕はまた、寂しくなった。