夢デアエタラ
【現夢五回目ー8】


「あん?
誰だ?

そこどけ、
俺は早く帰るんだよ」







見覚えのない螢は
ケンカを受けずに
さっさと帰ろうとする。







すると、
重吾がすかさず
螢のケツのポケットに
入っている財布を
抜き取り、

それを糧に脅しあげた。







「ほら!
返してほしいなら
俺と戦え!!」







そう言われても
今日は気分が乗らない。







「……いや頼むよ。
よく分かんないけど
俺の負けでいいからさ

財布返してくれ。

妹からもらった
大事な財布なんだよ」







本当にやる気がない。


こんな下手の螢も
珍しいものだ。







さすがの重吾も
そんな螢を見て
戦う気をなくしたようだ







「つまらねえ奴だな。

妹だあ?
どんな不細工な
妹か知らないが
そんだけ言うなら
返してやるよ。

チ。興醒めだな」







ピク……







その言葉に反応した
螢は

近くにある裏路地を
指差した。







「…君ちょっと
来てくれるかな」







優しい螢の言葉。


それにつられ、
重吾は素直に路地裏まで
ついていった。







「なんだよ」







重吾はそう言うと
螢はニッコリ微笑んだ。







そして……







ギャアアアアアア!!!







壮絶な重吾の悲鳴が
辺りに響き渡った…
< 109 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop