夢デアエタラ
【夢の実ー12】


いつもの山道を登り、
いつもの小高い丘に出た







そこで見たものは、
変わりない
殺風景の墓石の群。






ただ、
誰もいないのが
いつもの中の良いところ







麗花とゆっくり話が
できる。







「ケーキ買ってきたぞ」






柔らかい表情で
箱に入ったケーキを
ブラブラさせて見せる。







「え?俺が食うのか?」







螢は甘いケーキが
大の苦手。



そんな螢を知って
昔はよく、
無理やり麗花にケーキを
食わされたもんだ。






その見るからに
甘そうなケーキを
震える手で持ち上げた。







ケンカの時は
どんな人数に囲まれても
震えない螢が

これから食うケーキに
恐怖を覚えていた。






そんなケーキを
パクッと一口で
食べてみせた。







「う…げ…………

マズ……」







どこからか、
麗花の笑い声が
聞こえそうな気がした。







いつも
こんなヘンテコな顔した
螢を見て、

麗花が笑っていたのを
思い出していた
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